端書き

夢を見た。

スイスから帰ってくる途中の夢だった。

現実にはもう日本で仕事を再開してるし、実際のシーンとは全然関係なかった。

向こうに未練がない訳ではないけれど、見るからには何かしら頭の隅っこの方で考えてる虫がいるんだろう。

日本に帰ってきてからもモヤモヤしてる日々が少し続いているので、言葉にして頭ん中の整理を手伝ってあげたい。

 

 

縁あって、某有名製薬会社のマネージャーの人と少しだけ話す機会があったことを思い出した。

確かスコットランド出身で、学位取得後はどっかでポスドクをした後に企業に就職、そして転職で現職だったと思う。

旦那さんは高校の教師だと言っていた。自分が先にスイスに来た後もなかなか職が見つからず、当時の半年くらい前にやっと就職が決まったところだと、拙い英語の私にも話してくれた。子供の話はしなかった。生活が変わると大変だよね、って話をした。

 

皆さん優しいのと、日本企業の留学制度なんて知らないので、ポスドクしてるっていうとうちのオープンポジション紹介しようか?とか時々聞いてもらえる。外資はリストラが日常茶飯事というけれど、新しい人を受け入れるために常に<10%くらいはオープンポジションを作っておくらしい。リストラ自体も別に気軽にする訳ではもちろんないだろう。部署がなくなるなら話は別だが、その人がいなくなっても仕事が続く場合はリクルートコストも発生する。プロジェクトの進捗には余計なタスクでしかなく、メンバーが能力を最大限発揮してくれた方が話は当然スムーズだ。

 

外部からのプロジェクトリーダー採用も結構盛んだったりする。

例えば新規技術なんかがわかりやすいけど、自社にない技術チームを組織する時に経験ある人をよそから引っ張ってきて仕事を思いっきり任せてしまう。化学で言えば、単なる(と言ったら聞こえが悪いかもしれないが)SARのプロジェクトリーダーは社内の生え抜き研究員がapply出来ない、外部でのポスドク経験者限定なんてのも増えてきてるらしい。自社にないアプローチや人材へのアンテナがものすごい。仮にプロジェクトがポシャった後のキャリアはどうなるんだろう。即クビなんてことはさすがにないと思うけど、そういうのももっと聞いておけばよかった。

中国も近年はこの流れに追随しているらしい。有名どころで言えば、WuxiなんかはポスドクでJACS, ACIE数報持っててやっと研究員ポストが手に入るくらいなんだとか。

 

スイスやドイツは共通機器、いわゆるコファシリティが充実している。

技術員、いわゆるテクニシャンも多く、給与は日本よりも高めの印象がある。というか、日本は研究職全体の給与が低く、専門性が軽視されている印象を受ける。ちなみに技術員といってもPh. D.を持っている人も結構いる。単にルーチンワークをこなす要員ではなく、技術課題を解決したり、最適な方法を提案するための知識や経験が求められることもある。NMRやLCMS、X rayなんかはわかりやすい。他にも研究インフラ周り以外でもPh. D.を持ってる人が多かった。

Ph. D.以外は認めないとか、もっと日本もPh. D.を増やそうということが言いたい訳ではない。

Ph. D.は専門的知識・技能を持つ免許や保証のようなものであり、その有無で職務と給与が明確に分かれる。ただそれだけのもので、熟練のテクニシャンから見たら新米のPh. D.なんて、という話はもちろんよくある。肝心なのは、それでもPh. D.、もっというとポスドクまでのキャリアカリキュラムに価値があると見なされて、育成するために対価給与がしっかり払われることだ。修士は学費を払って研究の現場を広く学ぶ過程であり、博士は研究者としてトレーニングを受けると同時に、研究を実施遂行し、より深淵へと共に進むことで給与を得るPIのフォロワーの一人となる。ちなみにクビもある。完全ではないが、自立も求められる。

疑問の一つは、日本の産業界や教育界はなんでこれに追随しなかったんだろうといこと。チャンスはいくらでもあったはずだと思う。

 

スイスに限らず、やはり研究をするなら主言語は英語だ。

Zurichはドイツ語圏だけど、仏伊蘭澳英露印中くらいなら平気でみんなapplyしてくる。母国語ではないとは言え、必要なコミュニケーションは十分取れる。

陸が続いてるのも大きい。特にEU圏は就労ビザも要らない。休暇も基本的に自由に取れるし、人口も過密じゃないから移動コストが圧倒的に低い。

日本を出るということが選択肢として当たり前にはまだ存在してない。

当たり前だけど、日本は日本語多すぎ。他の言語に触れる機会が少なすぎ。日本以外の世界に触れる機会が少なすぎ。

 

だらだら書いて疲れたから今日はここまで。

なんかこんな世の中になってしまったから余計に難しいんだけど、会社の外の人たちともっと繋がりを作っておきたいなぁ。なんか窮屈だ。