Deucravacitinibの二つのメチル基を観察してみる

最近承認されたTYK2阻害剤のユニークなキャラクターを前々回のこちらの記事で紹介しました。 keetaneblog.hatenablog.com

いつもはPyMOLで遊んだスクショを載せたりしてましたが、最近遊んだpy3Dmolも前回テストしたので、今回はこれを使って構造を紹介します(使ってみたかっただけ)。

keetaneblog.hatenablog.com

まずDeucravacitinibがどんな構造かというと、こんな感じです。

メチル基自体は

  1. メチルアミド
  2. メトキシ
  3. メチルトリアゾール
    の3つがあります。

このうち、重要なのは1と2、特に1のメチル基はJAK1~3、TYK2のJH1結合活性を全く示さないことから、血球系の副作用を示さないことがDeucravacitinibと周辺ケモタイプの特徴として報告されています。

これらの特徴がなぜ発現するかを構造生物学的に説明することができます。
残念ながら2023.2現在、DeucravacitinibのPDBは登録されていませんが、類縁体がいくつか報告されています。
こちらはDuecravacitinib類縁体の一つとTYK2 JH2の共結晶構造です。(PDB ID : 6NZH)
左クリックのドラッグで回転、スクロールでズーム、controlキーを押しながらドラッグすると並行移動できます。
ポケットに入り込んだアミドのメチル基周辺を観察してみてください。主鎖と結構近いですよね?ね?
こればっかりは側鎖を表示して重ね合わせないと比べられないですが、JH1ドメインのポケットはどれも側鎖で埋まっているらしいですが、JH2はAlanine pocketと呼ばれる小さな間隙が存在し、そこを埋めることが選択性を発現していると考察しています(と記憶しています。間違ってたらごめんなさい。)

他のJH2ドメインに対する選択性はどうかというと、完全に切ることは難しかったようです。
こちらの文献に類縁体の報告があります。

https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.jmedchem.0c01698

ただし、JH2ドメインにはそもそも機能がないので他のファミリーでは細胞活性が見られず、Deucravacitinibや類縁体はTYK2だけの活性をJH2側からmodulateしているとの報告でした。
selendipityから見出された選択性ですが薬効面と副作用回避の面から非常に魅力的で、大きな市場になることが期待されているようです。
論文だけだと非常にコンパクトですが、これらの仮説を検証していく過程は彼らの非常に高いサイエンスを創造させてくれました。

最後に今回使用したhtmlスクリプトです。
はてなブログではmarkdown modeに貼り付けるだけで使うことができます。

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data-style='stick'></div>
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>
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次回(こそ)はデータ解析後編につづく...はず。。。